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ミルク1万年の会 2024交流会~私が考える酪農とミルクの未来~

ブラミルク@ロンドン(2026年予定)など、今後の「ミルク1万年の会」の活動計画
世話人 金谷匡高さん(法政大学江戸東京研究センター客員研究員)

ブラミルク@横浜のご紹介
 私からは、ミルク1万年の会のブラミルクの今後の活動についてご紹介します。
 まず、今年、10月12日に予定しているのがプラミルク@横浜です。
昨年は秦野で開催したのですが、今年も同じ神奈川県の横浜での開催です。テーマは「横浜居留地から始まった日本の近代酪農史」というテーマです。定員30名で、参加費は3000円です。懇親会は別途自由参加で4000円です。
 具体的な紹介をします。今回の開催趣旨をざっくりと要約すると、日本の近代酪農というのは、まずは、外国人居留地ができた横浜や神戸に、西洋から酪農の技術が入ってきて、そこで技術を学んだ日本人が東京や他の地域に伝播させていきます。その中心であった横浜に着目し、そこをみんなで歩いて、歴史の痕跡を探してみようというのが企画です。 今回の解説と案内は、JミルクのWEBコラム「日本の酪農歴史散歩」で北海道編を執筆担当されていて、現在、横浜編を執筆中の小林志歩さんにお願いしております。
 午前中に1時間ほど講義をしていただき、そのあとに私の方で少しオリエンテーションして、午後は街歩きという流れを計画しています。午前の講義の場所は、「神奈川県立かながわ労働プラザ」の会議室で、ここに集合です。午後の散策場所としては、居留地のあった山下居留地、そのあとに少し牧場が発展していったとされている山手居留地、そのあとは競馬場もあった根岸エリア、あと馬車道エリア。そういったところを散策する予定で、昔の酪農の痕跡が何かないか、参ります。募集期間は8月初旬から募集開始予定です。 少し、当日の散策のイメージを紹介します。昭和12年に「大日本職業別明細図」を見ると、根岸の方に競馬場があり、その周りにたくさん牧場が集まっているのがわかります。石川牧場などは近年まで続いた牧場で、その跡地を巡ろうと思っています。山手居留地には中川源蔵の牧場がありました。この牧場は、明治10年代の銅版画にも出ている歴史ある牧場でした。その牧場跡地に行ってみると、斜面地で当時の石垣がまだ残っています。中沢源蔵の旧中沢邸も現存していますが、実は横浜でほぼ唯一の明治の建築です。以上が、ブラミルク@横浜の宣伝になります。

ブラミルク@ロンドンの紹介
 次はブラミルク@ロンドンの紹介をします。
 現在、私は、ロンドンと東京の近代酪農史の研究を行っています。今まさに調べている最中です。少し先の企画で、2026年9月27日~10月2日開催予定で、催行人数15名。 私の方も研究中ということで、実施までの2年の間、事前の勉強会を一緒に開催できればと考えております。最初の勉強会は9月7日に開催します。
ブラミルク@ロンドンも、ブラミルク@横浜と同じように、Facebookやミルク1万年の会のホームページで告知します。
 この企画の趣旨を要約すると、近代における酪農は、ロンドンも東京や横浜と同じように、都市部で搾乳をして需要先に牛乳を配達していた地域になります。日本よりも当然時期が早くて、19世紀から20世紀の初頭まででロンドンの市内で搾乳を行っていました。そのベースになった乳牛の飼育や搾乳の技術を持っていた人たちは、イングランドの北部のヨークシャーという地域の出身です。この地域から、19世紀にロンドンに移り住んで搾乳を始めたというのが最近わかってきました。
 そういうことから、ブラミルク@ロンドンのスケジュールの最初の方は、ヨークシャーを訪問し、後半にロンドンの市内の酪農遺構を散策するという内容になっています。
事前の勉強会の方は4ヶ月に1回ほど定期的に開催させていただこうと思います。基本は土曜日の15時から、場所は法政大学で予定しています。この勉強会は、ブラミルク@ロンドンに参加するしないにかかわらず、参加していただいて構わないのですが、ブラミルク@ロンドンに参加される方は、事前勉強会にも毎回参加していただくようにしていただければと思います。
 ちょっとだけ触りを紹介させていただきます。
 ヨークシャーは、ロンドンから北に3時間くらい移動します。鉄道だと不便ですので、我々は貸切バスで移動する予定です。まず、ダラムという世界遺産の中世都市を訪問します。非常に古い町並みが残っていて、ハリーポッターの撮影でも使われています。ここにあるダラム大学のピーター・アトキンス先生は、イギリスの近代の酪農乳業史を専門にされていますので、お会いしてお話を伺うという機会を作れればと考えています。
 もともとは14世紀から酪農が有名な地域だと言われていますが、17世紀から19世紀にかけての酪農業の痕跡が今でも現存している地域になります。また、北イングランドは谷地形になっていて、そこに酪農地が広がっていました。この景観自体は国立公園になっていて保存されていますが、利用されずに廃墟化していた酪農の牛舎が2000年代から2010年代に大分壊されてしまったらしいのです。2016年ごろから建物保全のための活動が始まり、これらの中世の石造の牛舎が遺構として残されているので、これも見にいきたいと思っています。
 次に、ロンドンの方です。もともとロンドンはシティーが中心地で、だんだんと都市が拡大して今のロンドンになっていきます。18世紀は、シティの周辺部に放牧場だとか牧草地が広がっていました。かつての放牧地は酪農家たちが共同で放牧していてロンドン周辺にたくさんあったようです。だんだん都市化が進んでいくと、鉄道が1850年代にロンドンから地方に伸びていきます。これによって、遠い農村部からミルクがロンドンにどんどん運ばれてくるようになります。これをRail Milkと言っていたようで、都市部で搾乳された生乳(City Milk)の生産者と競争が激化します。こうしたことは日本でも起こりました。
 ロンドンの中心部に残っている酪農遺構は、Rail Milkを仕入れて牛乳を生産しは配達していた乳業会社の建物などで、牧場での搾乳から牛乳の製造・販売までを描いたレリーフが建物の壁面に描かれていたり、乳牛の頭部の彫刻がビルの上部に設置されていたりとさまざまです。こうした遺構を皆さんと一緒に回りたいと思います。
ぜひ、今秋のブラミルク@横浜、2026年のブラミルク@ロンドンにご参加ください。