「ブラミルク@高知」の活動報告(2025年11月14~15日開催)
|
ミルク1万年の会では、2025年11月14~15日、参加者16名(定員16名)で、高知県発祥である「山地酪農」とそれを支援する地域乳業の取り組みを学ぶため、ブラミルク@高知を開催しました。高知県内の山地放牧酪農3事例(雪ヶ峰牧場、斎藤牧場、ディアランドファーム)と、県内乳業の中核であるひまわり乳業を訪問し、地域酪農の多様な実践、飼養管理、経営構造、そして乳業側の価値創出モデルを視察し確認しました。訪問した酪農場は、いずれも「山地酪農」の生産方式を実施し、厳しい自然条件や急峻地形を前提にしながら、放牧と循環、生乳品質、地域連携、小ロット多品種生産など、それぞれ異なる方向性で独自の価値を高めている点が観察されました。 以下では、訪問した牧場とひまわり乳業でお聞きした内容を簡単に報告します。 1 雪ヶ峰牧場:周年放牧と風味を追求する完全放牧型モデル 2 斎藤牧場:地域副産物を核とした循環型・低投入型の山地酪農 3 ディアランドファーム:開拓史を起点とするフリーバーン+短時間放牧の複合モデル 4 ひまわり乳業:小ロット多品種と地域価値の結節点となる乳業メーカー 5 まとめ
1 雪ヶ峰牧場:周年放牧と風味を追求する完全放牧型モデル
ページトップへ
雪ヶ峰牧場は、200haの広大な牧野を背景に、ジャージー主体で周年放牧を行う経営です。放牧地だけで120haを確保し、昼と夜で放牧区を切り替える牧区運用により、草の再生と採食効率を高めています。搾乳牛45頭前後で、季節によって乳量変動が大きい点が特徴であり、夏前は草量豊富で15kg/頭に達する個体もある一方、冬季は5~10kg前後まで低下するそうです。こうした中で、草の量が減少する冬場の乳量維持は大きな経営課題ですが、夏場に栽培した乾草や地域の稲作農家に栽培してもらう稲のサイレージ(稲WCS)を活用しています。 特徴的なのは「風味」を最優先した飼料(補餌)体系で、イタリアンライグラス中心の乾草と稲WCSの給与を軸に、NON-GMO配合飼料を少量使用しています。乳牛の健康を第一に薬剤依存を避ける方針のもと、ストレス低減を重視し、乳房炎の抑制や体細胞管理での成果を上げています。搾乳は朝夕2回、パーラーでの効率的運用により、50頭規模であっても20分程度で作業が完了する体制を整備。牛の誘導はルーチン化され、少人数運営を可能にしています。 一方で課題は、WCS確保の地域的制約、老齢牛の計画更新、冬季の乳量低下、集中豪雨や干ばつによる草地ダメージなど、多様です。また、飲用牛乳以外の加工向け需要は強まっており、ソフトクリーム・菓子用途への供給が不足気味であることから、乳量増加のための増頭・飼料確保の検討が継続されていました。 ![]() ![]() ![]()
2 斎藤牧場:地域副産物を核とした循環型・低投入型の山地酪農
ページトップへ
斎藤牧場は25haの山地で放牧を主体にした経営で、放牧以外では、「地域副産物を飼料化して循環利用する」飼料給与を行なっています。具体的には、タケノコ皮、千枚漬けカブ残渣、酒粕、米ぬか、ビール粕など、地域食品産業の副産物をサイレージ化・保管し、放牧草と組み合わせて給与。購入飼料は「ふすま」が中心で、配合飼料やトウモロコシが僅かです。こうした持続可能な経営の先進性が評価され、農水省「みどりの食料システム戦略」部門で最優秀賞を(2025年度)されました。 牛群は急斜面環境に適応するよう中小型(400~500kg)で構成され、自然交配での繁殖が基本です。搾乳牛25頭規模で、日量約200kg、年間乳量は1頭あたり約5,000kgが目安です。急斜面では700kg以上の大型牛は事故リスクが高まるため、繁殖・淘汰方針も「山地適応性」を重視しています。繁殖後の子牛は転倒リスクを避けるため一度牛舎に移し、安全を確保してから段階的に放牧へ移行されています。 季節に応じて副産物の投入が変動し、秋から冬にはカブ残渣、11月からはタケノコ皮サイレージを中心です。高温期には日中採食が落ち込むため、朝夕採食を促し、酒粕で嗜好性を高める工夫がされています。課題は、夏季の草刈り負荷、高温ストレス、急傾斜固有の事故リスク、低温殺菌委託先の負荷などだそうです。 生乳はひまわり乳業で「牛乳」に製品化され、販売は斉藤牧場の「山愛会」など消費者団体による支援が中心です。地域循環と山地酪農の価値が消費者側に支持され経営が成立していることが特徴です。 ![]() ![]() ![]()
3 ディアランドファーム:開拓史を起点とするフリーバーン+短時間放牧の複合モデル
ページトップへ
ディアランドファーム(岡崎牧場、経営者は鹿島さん)は、高知の山地酪農を先駆者で、創始者。岡崎正英さんの取り組みを通して山地酪農方式は全国に広がっていきました。 ただ、かつては全面放牧であったが、放牧地の面積も狭まく急峻地形であったために草地維持の困難(他の牧場に比べ、比較的住宅地に近く面積の拡張も困難)から、現在はフリーバーン牛舎と育成牛中心の短時間放牧を組み合わせた体制へ移行しています。現在は、総頭数82頭、搾乳牛51頭で、年間乳量は1頭あたり約9,000kgと比較的高位安定型です。 現在は、山地の草地は1~1.5ha程度に縮小しており、北斜面は日照不足、蛇紋岩による表土の薄さなど、草勢維持に厳しい条件が続いています。また、急斜面での転倒・骨折リスク、高齢牛の入山制限など、安全性を最優先する判断が随所で行われています。現在は、NON-GMO・PHF飼料を採用し、乳質重視の方針を維持し、生乳の一部は、ひまわり乳業から牛乳として製品化され販売されています。 経営のもう一つの柱が店舗運営です。ソフトクリーム・スイーツなどの加工品は生乳の利用量では1%程度だが、収益では約10%を占める重要な事業となっています。また、酪農教育ファームとして年間約1,000人・20校を受け入れ、餌やり・ブラッシング・バター作り等を提供しています。搾乳体験は衛生的なリスクのため中止しましたが、ふれあい価値を中心に体験を再構成し、地域に消費者からの高い評価を受けています。ただ、繁忙期は酪農作業が中心となり、消費者を受け入れることの負荷や酪農本業との時間調整が課題となっています。 ![]() ![]()
4 ひまわり乳業:小ロット多品種と地域価値の結節点となる乳業メーカー
ページトップへ
ひまわり乳業は創業103年の地域乳業で、「健康・自然・地域」を開発基準とする独自の事業モデルを確立しています。特に、個性的な製品を軸にした「小ロット多品種」を強みとし、8~18tの小型タンクを多数配置し、段取り替えロスの削減や水追い回収を徹底することで生産効率を維持しています。主要収益商品は青汁であるが、成長ドライバーは「搾乳から最短時間」で届ける超鮮度牛乳と、全国普及が進むストローレス給食パックです。 高品質牛乳は、深夜~早朝集乳→即時殺菌・充填→早朝発の大阪便で出荷し、翌朝に関西の小売店頭に並ぶという高速流通により「新鮮価値」を訴求しています。学校給食向けストローレスパックは全国でもいち早く2021年導入しました。現在では全国普及率3割に到達し、年間約200tのプラ削減に貢献。青汁は農家の無農薬栽培を自社が管理し、契約生産・集荷・加工・販売まで一貫体制を取っています。 酪農家とは定期的な懇親会や表彰、深夜集乳の協力体制など、「距離の近い関係性」が生乳確保とブランド価値の源泉となっています。 山地酪農の継続を何とかして支援しようと、先述した3つの酪農場ブランドの牛乳の製造を、生乳の持ち前の風味などの特徴を維持するために低温殺菌で行なっています。 課題は、小ロット生産ゆえの現場負荷、人手不足、低温殺菌・デザート系など製造難度の高い商材の負担、設備更新サイクルの課題などです。 ![]() ![]() ![]()
5 まとめ
ページトップへ
今回の視察を通して、高知の山地酪農やそれを支援するひまわり乳業について、次のような特徴がわかりました。 1.自然条件に合わせた多様な飼養体系:周年放牧、山地適応型放牧、短時間放牧+フリーバーンなど、牧場ごとに明確な個性と戦略がある。 2.循環資源・副産物活用による低投入型構造:特に斎藤牧場のモデルは全国的にも示唆が大きい。 3.加工・体験・観光を含む多角化:ディアランドの店舗・教育ファーム、雪ヶ峰の加工用途強化など、複線化が経営安定に寄与。 4.乳業との密接な連携と物語の共有:ひまわり乳業が地域の一次産業と深く結びつき、酪農家の価値や山地酪農の物語を商品として消費者に届けている。 これらの構造が補完しあい、「自然・循環・地域連携」を核とした独自の酪農エコシステムを形成しています。 今後は、季節変動、人手不足、草地管理、WCS確保などの課題を共有しつつ、牧場と乳業、行政、消費者が一体となった価値共創がさらに期待されます。 ![]() ![]() (吉澤社長が「アンパンマンのテーマ」を演奏し歓迎) |













